久しぶりにカンボジア人のKさんと会い、日本から来たVさんと3人で夕食にヤギ鍋を囲んだ。そのとき、Kさんが鍋のなかのヤギ肉を見て、自分のおじさんとの思い出話をしてくれた。Kさんがまだ子どものころの話で、今から15年、20年前の話だ。
Kさんのおじさんは長い間兵士をしていたこともあり、食べられるものはなんでも食べる人だったという。そんなおじさんとKさんが食事をしに行ったときのこと。Kさんは、入ったお店で出された肉料理の肉が、その形状から足の肉だということはわかったが、何の肉なのかわからなかった。そんなKさんに対しておじさんはこう言った。
「これはヤギの肉だ。食べて見なさい」
おじさんに勧められるまま食べてみた。カレーのように煮込んだ肉料理でおいしかった。
その晩、寝床についてからのこと。なぜか体がカッカッと火照るように熱くなり、汗をかいたので水浴びをしてからまだ寝床についた。だが、しばらくするとまたカッカッと体が熱くなったので、再び水浴びをした。Kさんが言う。
「その晩は寝床についた後だというのに、2回も水浴びしたんですよ」
あとで知ったことだが、その肉はヤギではなく、犬肉だった。犬肉には体を温める効果があるため、カンボジアでは1年のうちで最も涼しい12月から2月ごろにかけて犬肉を食べる人がいるという。ただし、犬肉を食べる習慣は、カンボジア人にとっては一般的なものではなく、隣国ベトナムから入ってきた比較的新しい食習慣で、食べないカンボジア人も多いと聞く。Kさんのおじさんは料理が得意で、そのおじさんによると、犬肉はココナツミルクで煮るとおいしいらしい。
さて、別の日、Kさんがまたおじさんと食事をしにいくことになった。その店で、Kさんはまた自分が知らない肉料理を出された。おじさんは
「これはウサギの肉だ。食べて見なさい」
と言った。これまたあとで知ったことだが、その肉は猫の肉だった。Kさんによると、犬肉は首都プノンペンでも食べられるが、猫の肉を出す店は地方に行かないとない。しかも、その肉が猫の肉だと客に知られると売れなくなるので、客に肉の正体がばれないように出すという。
「そのおじさんは10年くらい前に亡くなりましたが、おもしろい人でしたよ」




