■カンボジア人の「余裕」
幸い、プノンペンに戻るその日、誰かと約束があったわけではないので、帰りが遅くなってもさしたる問題はないのだが、正直、先が思いやられるなあという気持ちだった。
とうとう運転手はバスを止め、エンジン部分を点検しにいった。日本だったらバス会社や旅行会社にクレームが寄せられるところだろう。だが、この日のバスに乗っていた乗客たちはややざわついているものの、文句を言う人は一人もいない。「シェル(ガソリンスタンド)までたどり着けば修理できるだろう」という声が聞こえてくる程度。
15分ほどでエンジン部の点検をしてきた運転手が車内に戻って来た。なんとか動くようにはなったものの、根本的には解決しなかった模様。
「お客様にはご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございません」
なんていう言葉が発せられるものだと思った矢先、運転手の口から出た言葉は下品な冗談だった。
「バッタンバン(州)まで大便をしに行っていたので、ずいぶん時間がかかってしまいました」
乗客もその冗談に乗る。バスの運行速度は30キロ程度。
「このバス、前進する力はあるか!?」
「この車は観光バスだから、さしずめ私たちはカンボジアにやって来た外国人ってところか。キャピトル社はわざとスピードを落として走ることで、カンボジアの田舎の風景を楽しませてくれてるんだな」
「キャピトル社は誠実だよねえ」
「テレビでコマーシャル流したらいいんじゃない?」
「プノンペンに着くの、何時になってもいいかな」
「おっ、(バスの)力が戻って来たぞ!」
「もうすぐストゥンミアッ(休憩所のレストランの名前)だ、もうすぐだ!」
「おー! 着いたぞ、着いたぞ(拍手)、入ったぞー。」
電車が1分遅れたことで「お客様には大変ご迷惑をおかけしております」なんていうアナウンスが流れる社会とは、根本的に違う世界がここにはある。カンボジア人のこうした精神的な余裕を見せつけられるたびに、自分はまだまだ修行が足りないなあと思うのだった。
コメント
早いはエライ?
初めまして!初書き込みです。『トーマダー』を毎号楽しく、また興味深く購読させてもらっています。
よく言われることですが、現代は「早さ」が求められる時代だとされます。早くて悪い、と言われることはもちろんケースバイケースですが、ほぼないように思えます。しかし本当に「早いはエライ」と言えるか怪しい時があります。日本のみなさーん!早いはエライですか?何か大切なものを犠牲にしていませんか?と、日本に居る自分が言うのもなんですが・・・。そんなことをブログを読んで再び考えてしまいました。人はどこまでこの「早さ」についてゆけるんでしょうね?長くなってしまいましたが、ブログも次号の『トーマダー』も楽しみにしています!
- 2008/04/23(水) 20:32:02 |
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- Dai #-
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喪失と恩恵
Daiさん
コメントをありがとうございます。また、いつも当ブログと「トーマダー」をご愛読くださりありがとうございます。
「早さ」を追求した結果、失われたものもあるかもしれませんが、現代の日本社会が成立している陰には「早さ」がもたらした恩恵もたくさんあると思います。
バランスの問題でしょうか。
カンボジア
カンボジアの詳細については上: http://www.netvibes.com/cambodia




