薔薇 現在の閲覧者数: トーマダー 200809

トーマダー

「トーマダー」とはカンボジア語で「ふつうの、ありふれた」を意味することばです。「ふつう」で「ありふれた」カンボジアを通して、今まで語られることのなかったこの国の多様な表情を伝えていきたいと思います。

■お菓子づくり

コンポントムお菓子づくり
▲コンポントム州の農村でお菓子づくりをする女性。

コンポントム州のある農村で、土地の神ネアックターに捧げる祭りを見に行ったときのこと。祭りが行われる村の各家庭では、ネアックターに供えるためのヌムが作られていた。

仏教研究所発行のクメール語辞典(カンボジアの国語辞典)の定義によると、ヌムというのは粉から作られる食品一般を指す言葉で、例えば米粉から作られる麺のヌム・バンチョック(ハーブたっぷりの香しいスープをかけて食べる、9月3日にアップロードした下の「シソポンのヌムバンチョック売り」を参照)、仏教関係の行事のときによく作られるちまきのような食べ物ヌム・オンソームなど、さまざまなヌムがある。ヌムにはお菓子のように甘いものが多く、また、外来のスナック菓子やケーキなども粉から作られている場合はヌムと呼ぶためか、ヌム=お菓子と訳されることがあるが前述の辞典の定義に照らし合わせると正しいとは言えない。
また、同じく粉から作られるものであっても、ベトナムから伝わった食品の場合はヌムとはいわず、ベトナム語のバンニュ(banh)がそのまま使われるようだ。名称にこのバンニュを冠する食品としては、バンニュ・チャエウ(ベトナムでいうところのバンニュセオ、バインセオ)、バンニュ・カンニュ(やや厚めの餃子の皮のようなものにタレをつけて食べる)、屋台でおなじみの甘味バンニュチャヌア(豆餡入りの白玉団子のようなもの)などがある。

写真の女性は棒と臼のようなものを使い、米を搗いて粉にしている。片手で棒のほぼ中央部を握り、勢いよく上下に動かして米を搗き、粉にする。それにココナツを加えて蒸し菓子を作る。この米を搗く作業は見ていると誰にでもできそうに感じられるのだが、実際にやらせてもらったところ、片手で棒を握って搗くため、棒のバランスをとるのが難しく、棒がふらふらしてしまってなかなか臼の中央を搗けない。写真の女性はさすが手慣れたもので、リズミカルに棒を上下に動かし、見事に米を搗いていた。熟練の技に脱帽である。

■シソポンのヌムバンチョック売り

シソポンのヌムバンチョック売り
▲バンテアイミエンチェイ州スヴァイシソポン郡の長距離バス・タクシー乗り場でヌムバンチョックを売る女性。

ヌムバンチョックというのは、米の粉から作られる麺にソムローと呼ばれるスープをかけて食べる料理で、カンボジアで広く食べられている。麺は農家で作られている場合が多いようで、作り立ての麺はもちもちとした弾力に富んでいる。市場で売られているものはややぼそぼそしていて、ぷつぷつとすぐ切れてしまう。できたてのものと比べるとその食感や風味は雲泥の差だ。ヌムバンチョックの真価は農村でないと味わえないといっても過言ではない。
2008年8月現在、1杯2000リエルから3000リエル(米1キロが2000リエルから4000リエル)程度。もうひとつ、よく知られている麺料理にクイティウがあるが、こちらは中国人が伝えたものだ。
ヌムバンチョックにかけるソムローは数種類あるが、どれも一般に複数種のハーブをすりつぶしてペースト状にしたものにプロホック(淡水魚を塩漬けにして発酵させたもの)を加えている。くせのある食材が好きな人にとってプロホックは親しみやすいかもしれないが、そうでない人にとっては魚臭く感じるかもしれない。なお、ソムローや作り手の好みによってはプロホックの入っていないものもある。
ヌムバンチョックとよく似た料理はカンボジアの隣国であるタイやラオスでも見かけるので、比較してみるとおもしろいと思う。