薔薇 現在の閲覧者数: トーマダー 20080611

トーマダー

「トーマダー」とはカンボジア語で「ふつうの、ありふれた」を意味することばです。「ふつう」で「ありふれた」カンボジアを通して、今まで語られることのなかったこの国の多様な表情を伝えていきたいと思います。

■来世はアメリカ人か日本人に生まれ変わりたい

取材で首都プノンペンから南へ約50キロのところにあるコンポンスプー州を訪れた。毎度のことながら、出発時点で明確な取材対象者は決まっていないため、漠然とした目的地に着いたらまずは対象者探しから始めなければならない。この点がおもしろくもあり、頭を悩ませるところでもある。
今回の取材対象者はクルークマエだ。クルークマエというのは、精神的なカウンセリング、伝統療法による病気の治療、護符の作成、悪霊退散などの呪い(まじない)などを司る人のことで、それぞれ得意分野を持っている。「悪霊退散」と書くと、ややオカルトじみていると感られるかもしれないが、カンボジアでは人間の生活に悪影響を及ぼすと考えられているさまざまな霊的存在が広く信じられており、それらの中には、日本の古典や絵巻物、昔話などに登場するものとそっくりなものもある。
今回インタビューしたのは悪霊退散をひとつの専門とするクルークマエで、パーリ語や仏法にも通じている。彼は田園の広がるコンポンスプー州の農村の一画にサトウヤシの葉で葺いた屋根の小さな建物を建て、そこで伝統療法に基づいた治療を施す施療院のようなものを営んでいる。
インタビューの最中に相手が発した言葉のなかで、今でもひっかかっているものがある。人間の行いについての話になったところで、そのクルークマエは冗談めかしてこう言った。
「私もいい行いをし、来世ではアメリカ人や日本人に生まれ変わりたいです。日本人は非常に賢く、すばらしい製品をたくさん生み出しているじゃないですか。私は前世での行いが悪かったせいか、現世では脳みそのよくないカンボジア人として生を受けましたからね」

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