
▲候補者の演説を聞き終えて帰宅する人々
取材のため、プノンペンの南に位置するカンダール州のコットムへ向かう最中のこと。国道沿いの村でノロドムラナリット党の候補者が選挙演説をしていた。カンボジアでは来月の7月下旬に総選挙が行われることになっている。
カンボジアで選挙演説を直接聞いたことがなかったため、村の人たちに混ざって候補者がどんなことを訴えているのか聞いてみることにした。候補者は木造高床住居に囲まれ、ココヤシやバナナの生えた緑豊かな個人宅の庭先でマイクを片手に主張を叫ぶ。村人たちは地面に敷かれた青いビニルシートに座ったり、床下の縁台に腰を下ろしたりして、候補者の話を聞いている。
演説に耳を傾けたのは途中からであったが、内容は隣国ベトナムやタイとの間で抱えている領土問題、ここ最近甚だしいガソリン価格とさまざまな物価の上昇、支持政党の違いによって引き起こされる人間関係の悪化、失業率などだった。
聞いていて印象深かったのが、野党の候補者とはいえ、隣国タイやベトナムをあからさまに敵視する発言を繰り返していたこと、与党の人民党を名指しで批判していたこと、それに加えて具体的な政策を何一つ掲げず、候補者が考えるカンボジアの問題点をすべて解決すると言い切ったことだった。
演説が終わったあと、支持者らしき人物たちが、車から段ボール箱に入った荷物を担いできて、村人たちに説明し始めた。こちらの問いに対し、隣に座っていた高年の男性が口を開く。
「(あれは)味の素と薬だよ。私たちにくれるんだよ」




