キャピトル社のバスに乗り、シェムリアップ州からプノンペンへ帰ったときのこと。バスのエンジン部に不具合が生じ、路上で何度もエンストを繰り返すようになってしまった。今まで何度もバスを利用したことがあるが、エンストに見舞われたことはない。運転手はなんとか問題を解決しようとあれこれ工夫したが、やっとのことでエンジンがかかってもスピードは30キロ程度しかでないような状態だ。しかも、まだシェムリアップとプノンペンの中間地点にも達していない。
幸い、プノンペンに戻るその日、誰かと約束があったわけではないので、帰りが遅くなってもさしたる問題はないのだが、正直、先が思いやられるなあという気持ちだった。
とうとう運転手はバスを止め、エンジン部分を点検しにいった。日本だったらバス会社や旅行会社にクレームが寄せられるところだろう。だが、この日のバスに乗っていた乗客たちはややざわついているものの、文句を言う人は一人もいない。「シェル(ガソリンスタンド)までたどり着けば修理できるだろう」という声が聞こえてくる程度。
15分ほどでエンジン部の点検をしてきた運転手が車内に戻って来た。なんとか動くようにはなったものの、根本的には解決しなかった模様。
「お客様にはご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございません」
なんていう言葉が発せられるものだと思った矢先、運転手の口から出た言葉は下品な冗談だった。
「バッタンバン(州)まで大便をしに行っていたので、ずいぶん時間がかかってしまいました」
乗客もその冗談に乗る。バスの運行速度は30キロ程度。
「このバス、前進する力はあるか!?」
「この車は観光バスだから、さしずめ私たちはカンボジアにやって来た外国人ってところか。キャピトル社はわざとスピードを落として走ることで、カンボジアの田舎の風景を楽しませてくれてるんだな」
「キャピトル社は誠実だよねえ」
「テレビでコマーシャル流したらいいんじゃない?」
「プノンペンに着くの、何時になってもいいかな」
「おっ、(バスの)力が戻って来たぞ!」
「もうすぐストゥンミアッ(休憩所のレストランの名前)だ、もうすぐだ!」
「おー! 着いたぞ、着いたぞ(拍手)、入ったぞー。」
電車が1分遅れたことで「お客様には大変ご迷惑をおかけしております」なんていうアナウンスが流れる社会とは、根本的に違う世界がここにはある。カンボジア人のこうした精神的な余裕を見せつけられるたびに、自分はまだまだ修行が足りないなあと思うのだった。
■カンボジア人の「余裕」
■言うは易し、行うは難し
人のやっていることを批判するのは簡単だ。問題は自分がいかに行動するかだと思う。人の批判をする前に、自分の言動を見直すようにしたい。
「言うは易し、行うは難し」
昔の人はよく言ったものだ。
「言うは易し、行うは難し」
昔の人はよく言ったものだ。
■火事から自宅を守る

▲枯れ草を焼いた後(シェムリアップ州バルン郡)
とあるテレビ番組の通訳でシェムリアップ州の北、アンロンベンへと続く道にあるバルン郡の集落へ行った。この集落は乾季になると深刻な水不足に見舞われるという。集落の家々は道路沿いに点在するように建っている。
大地は乾ききったように見え、家々の周囲は枯れ草で囲まれている。よく見ると、ところどころ黒く焦げたようになっているところがあり、まだ火のくすぶっているところや勢いよく炎を上げて燃えているところがある。枯れ草を燃やしているのだ。一見すると焼き畑のように見えなくもない。だが、燃えていたり、燃えきって黒く焦げたところはあるものの、焼いた後の土地で耕作しているような場所は見当たらない。
近くにいた女の子に聞いたところ、火事を防ぐためにわざと枯れ草を燃やしているのだという。つい数ヶ月前も、枯れた大地のどこかで発生した火で一件の住宅が焼けてしまったらしい。集落の住民の男性がこう付け加えた。
「1年に1回、枯れた草に火をつけて燃やすんです。燃やしておかないと草地で発生した火で家が燃えてしまうことがあるからです」






