薔薇 現在の閲覧者数: トーマダー 20070918

トーマダー

「トーマダー」とはカンボジア語で「ふつうの、ありふれた」を意味することばです。「ふつう」で「ありふれた」カンボジアを通して、今まで語られることのなかったこの国の多様な表情を伝えていきたいと思います。

■「(食べても)いいよ」

夜出かけた帰り、最近の果物不足を考慮して、市場で果物を買って帰ることにした。8時40分を回っていたため、営業している果物売場の数は少なかったが、まだ閉まっていないところでポーサットオレンジとマンゴスチンを買うことにした。
果物の女王と形容されることのあるマンゴスチンは1キロ3500リエル(約105円)、甘酸っぱさが魅力の果物で、今回買ったのはカンボジア産ではなくタイ産だ。一方、ポーサットオレンジは1キロ4000リエル(約120円)で、最近買った絞り器でオレンジジュースにして楽しむ予定。
さて、傷んでいるものを避けるため、同行者がマンゴスチンを注意深く選んでいたところ、親指がマンゴスチンの皮に「ぐにゃり」とめり込んでしまった。それを見た売り子の女性が言う。
「あらら、親指がマンゴスチンとくっついちまったねえ、はっはっはっは!」
この一言を聞いた僕たちも売り子に併せて
「わっはっはっは!」
加えて、マンゴスチンを選んでいた同行者が
「(このマンゴスチン)食べちゃおう、いいですか?」
と売り子に聞くと二つ返事で
「いいわよ」
と来る。

カンボジアに「やられて」しまった人たちの中には、この緩い空気感にどっぷりと浸かっている人が少なくないような気がする。逆にこの空気感に対していらだちを感じるような人は、反対の意味でカンボジアに「やられて」しまうんじゃないだろうか。

■ウソか誠か、単に計算できないだけか?

自転車に乗って移動していたところ、「パンッ!!!」という勢いのいい音を出して運悪くパンクしてしまったので、路上のパンク修理屋で直してもらうことにした。音から察するに、チューブが破裂したのだろう。近くにいたカンボジア人たちはくすくすと笑いながら
「タイヤが破裂した!」
と言う。念のため修理屋に確認してみたが、パンク修理では対応できないほどの立派な穴が空いている。修理屋も
「こりゃあ、チューブを交換するしかないよ」
という。しかたがないのでチューブ交換を依頼した。いくらかかるかと尋ねると、1万リエルだという。ちょっと高い。バイクのチューブの新品が8000リエルで交換できるのに、それより小さい自転車のチューブがなぜ高いのか。抗議するがあまり受け付けてもらえない。
「これはシアム(※)製のチューブで品質がいいから高いんだ」
修理屋の男がいう。聞き飽きた台詞に再度抗議し、9000リエルにしてもらう。1000リエルは日本円にしたら30円ぽっち(1米ドル=120円として計算)だが、これは数字(金額)の問題というより姿勢の問題である。抗議しなければ気が済まない。
修理の料金に折り合いがつき、さて修理という段階になって少年がチューブを買いに行くという。ストックがないらしく、近くの市場にいって買って来なければならないらしい。男によると「仕入れ値」は8000リエル、仕入れに行くのにモトドップ(バイクタクシー)に乗って市場と修理場との間を往復し、モトドップに1500リエル支払っていた。
「チューブ代は1万リエルなので自分の利益は1000リエルしかない」
と男が言うが、それならモトドップ代(1500リエル)を差し引くと損していることになるじゃないか。帰ってきた男が修理に取りかかり、数分でチューブ交換を終えたところ、今度はタイヤに大きな傷があることが判明し、タイヤも交換しなければならなくなる。
「タイヤを交換したらいくらかかる?」
男に聞くと、まずはタイヤの値段を確認しなければならないという。通常の修理屋ではスペアのチューブやタイヤを用意しているものだが、ここでは両方とも切らしてしまったのか、それとも用意していなかったのか、ともかく両方ともないらしい。男がまたモトドップに乗って市場へ行く。また往復1500リエルを支払って。
帰ってきた男にタイヤの値段を聞くと、値段を告げたあと、またこう言う。
「自分は1000リエルしかとらない」
だからさ、本当にあなたの取り分が1000リエルしかないとすると、モトドップ代が1500リエルかかっているんだから、あなたが損することになるじゃないか。それをわかって言ってるのかい?

※カンボジア人が一般的に使うタイ(またはタイ人)の蔑称

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