トーマダー

「トーマダー」とはカンボジア語で「ふつうの、ありふれた」を意味することばです。「ふつう」で「ありふれた」カンボジアを通して、今まで語られることのなかったこの国の多様な表情を伝えていきたいと思います。

トーマダー6

遺跡以外のカンボジアを旅する本
「トーマダー」第5号
2008年12月1日発行!

〔内容〕
■母子の健康を脅かす?
 カンボジアの妖怪アープ
■「ごみ」を工芸品に変える
 カンボジアのリサイクル
■カンボジアの伝統食品
 プロホックができるまで
■自然とともに生きる
 少数民族の暮らし(2)
 薬獣の話
■ストゥンミエンチャイの
 ゴミ捨て場と人々の暮らし(5)
 遠い国の私たち 医療に見える貧困
■コンポントム
 村での暮らしと子どもの生活(5)
 3歳からのギャンブル
■シハヌークビル魚河岸日誌(5)
 市場の道具はかり

 詳しくはこちら



■プロホックづくりのビデオ映像

数日前まで、ビデオで撮影したプロホックづくりの様子の取材映像の編集に取り組んでいたが、それがやっとまとまったので、協力者のひとりに送った。そろそろ先方に届くはずだ。彼のチェックを受けて、映像プロジェクトの第一弾公開映像がプロホックづくりの映像になるかならないかが決まる。
採用されれば、近いうち、ネット上で視聴できるようになる予定。

次のビデオ取材対象を考えよう。

いろいろあって、まだ発行できていないトーマダー6号のための取材も続けている。今日はビンロウとキンマを嗜む習慣について、実際にキンマとビンロウを売っている人に話を伺った。昔から続く物事の背景を聞くと、カンボジアの人々の考え方の一端を伺い知ることができ、興味深い。キンマとビンロウにも、「近代化」と「伝統」のせめぎ合いを感じ取ることができる。

こうして世界はまた一歩、均一化を道を辿り、平坦になっていくのだろうか。独自性が失われたのっぺらな顔に魅力を感じる人が増えてきているのか、それとも強者支配の論理が進行しているだけなのだろうか。

■カンボジア動画サイト

プロホック作りの過程を撮影してまとめたビデオ作品が一応、ほぼ完成した。撮影、編集、ナレーションなどすべて一人でやったので、映像作品づくりに不慣れな自分には大変な作業だったが、やりがいのある仕事だった。とはいえ、自分の醜い声がナレーションとして入っているのが堪え難いところだ。

オリジナルDVD計画は、トーマダーだけではなく映像の形でもカンボジアを表現してみたくなり、個人的に始めたことなのだが、ひょんなことから友人と話が合ってスタートすることになったカンボジア動画サイト計画で使われる第一弾映像の候補となった。見事、採用されれば、インターネットを通して「放送」されることになる。
少しでも多くの人に見てもらえたら嬉しい。

次の映像作品のテーマとしては、あるカンボジア人の1日を追う「1日シリーズ」、物作りの様子を伝える「物作りの現場を訪ねる」などを考えているが、先日のメンバー打ち合わせで、ほかにももっと人間臭いテーマで取材できたらおもしろいものができるんじゃないかという話になった。


■自然の恵み

カンダール州キエンスバイ郡のある村で、近代養蜂による養蜂をやっているところがあるという情報を得たため、取材に行ってみた。場所はモニボン橋を渡り、国道1号線をしばらく進んだ先にあるプレークアエンだという。

英字紙Phnom Penh Postの報道や、その他の情報源から仕入れた情報によると、カンボジアでは近代養蜂によるハチミツの採集などはシェムリアップ州の一部の地域をのぞき、行われていないという。そのシェムリアップのある村では、プノンクーレン(クーレン山)から移住してくるミツバチの習性をうまく利用して自然の環境のなかで営巣させ、ハチミツや蜜蠟を採集している。
それなら、ほかの地域でも山に近いところでミツバチの周期的な移住経路の範囲内にあるところなら、似たような形で近代養蜂が行われている可能性があるし、山に近くなくとも、別の形での養蜂が行われていることも考えられる。キエンスバイの養蜂の話は、そんなことを考えていた矢先に聞いた。

しかし、村の人にいろいろ聞いて回ったものの、近代養蜂をしているという人は見つからなかったし、村の人もそんな話は聞いたことはないという反応だった。代わりにチョンプレーク集落で旧式養蜂によるハチミツ採集をしている人の話は聞くことができた。彼は父親の代からハチミツの採集をしているとのことで、プノンペンのチュルイチョンワー橋を渡った先にあるプレークリアプやバケンのあたりでハチの巣探しをしている。その彼も近代養蜂をしている人の話は聞いたことがないという。

とはいえ、カンボジアらしい話が聞けた。ハチミツ探しといっても、広大な森や浸水林のなかでどうやってハチの巣を探すのだろう。運任せでなんのあてもなく彷徨っていては、そう簡単に見つからないはずだ。カンボジア人の伝統や風俗習慣について調査しているミエイポン氏の著書によると、ハチの動きによって近くに蜂の巣があるかないかを判断するというが、チョンプレーク集落の彼の場合はどうなのだろう? 彼は言った。

「花が咲き乱れ、そこにミツハチが飛び、近くに森(林)があれば、そこ(森、林)には蜂の巣がある」

カンボジア語には、「水あるところに魚あり(ミエン タック ミエン トレイ)」、「ミエン プレイ ミエン プラエチュー(森あるところに果物あり)」ということわざがある。自然の恵みを享受して生きてきたカンボジア人らしいことわざだと思う。森の恵みであるハチミツも、水や森と同じなのだ。

水があればそこには魚がいる、森があれば果物がある、花が咲きミツバチが飛び、近くに森があればそこにはハチミツがある。水田には食用となるカエルやカニ、小魚が、沼には貝がいて、森には薬用植物もある。ローク・シーというカンボジア語の表現が思い浮かぶ。ロークは「探す」、シーは「食う」。「生計を立てる」「食べて行くためにするさまざまな仕事」といった訳が当てられることが多いようだが、もともとは自然の恵みのなかから「食うものを探す」という意味だったのではないかと思う。





■印刷所からの営業電話

以前はまったくなかった印刷所からの営業電話が数ヶ月前からぽつぽつかかってくるようになった。プノンペンは町の大きさ、人口の割に印刷所が多く、競争が激しいと聞く。それに不況が襲いかかり、各印刷所は苦しい経営を強いられているのだろうか。
近いうち、電話のかかってきた印刷所の人と会うことになっている。おそらく単なる営業だとは思うが、意外な展開に発展する可能性もある。

■地雷問題は貧困問題

(カンボジアの)地雷問題は貧困問題だという文章を読んだ後、その現場を歩く機会に恵まれた。地雷の被害にあって足を失う人よりも、交通事故で足を失う人が増えているという報道がされるようになってしばらくたつが、前述の文章の筆者(以下、「筆者」とする)が言うとおり、これは統計の一端を示しているに過ぎない。

確かに交通法に対する意識や運転マナー、道路や車両の状態など、もろもろの事情により交通事故件数は増加する一方で、この国の交通事情は「アジア最悪」と評されるほど悪い。それに、地雷の被害に遭う人が以前と比べると少なくなっていることもまた事実だろう。かといって、カンボジアから地雷がなくなったわけでは決してないし、否、それどころかまだまだ無数の地雷がこの国の国土を蚕食し、人々の脅威となっていることに変わりはない。地雷除去活動が少しずつ進み、いくつかの疑わしい土地がマーキングされたことで、犠牲になる人が減ってきたことは歓迎すべきことだが、地雷問題が解決したわけではないのだ。

「筆者」によれば、今のままのペースで除去活動が行われた場合、すべての地雷が除去されるまでに70年、80年という時間がかかる。また、すでに除去された地域は、地雷が埋設されていると疑われる土地の15%程度に過ぎないという。

地雷問題は貧困問題だ、というのは、経済的に貧しい人が生きていく土地を求めて、貧しいが故に地雷の脅威が潜む土地で暮らさざるを得ない状況のことを言っている。ある人は言った。
「ここには地雷があるけれど、私たちには生きていく土地がなかった。土地がないよりは、たとえ地雷があったとしても土地があるほうがましだ」
こうした人々が、生きる糧を求めて、文字通り命をつなぐために地雷原へ足を踏み入れてしまい、悪の兵器の犠牲となる。経済的なゆとりがないために、安全な土地を手に入れることができない人々。

地雷問題は貧困問題である。


■大阪・高槻市でカンボジアイベント

大阪の高槻市で日本とカンボジアをつなぐイベント「カンボジア・ミーツ」が行われます。日本ではなかなか見る機会のないカンボジアの映画がなんと3本も上映される貴重な機会です。
上映スケジュールなどの詳細は公式ウェブサイトをご覧ください。

カンボジア・ミーツ
http://www.c-meets.com/index.html

■夕焼け

ここ数日、雨上がりの夕焼けがとても美しい。空には雨を降らした後の雲がいくばくか残り、それを温かい光が包んでいる。もうすぐ本格的な雨季だ。

■モンドルキリでのコミュニティー・ハニー・ツアー

モンドルキリ州の州都センモノロムに着いた翌日、ハニーフェスティバルの会場で最大の目的であったコミュニティ−・ハニー・ツアーの申し込みを済ませた。定員は30人ほどで、優先順位があると聞いていたが、会場にいたカンボジア人のスタッフに確認したところ、まったく問題ない様子で「40人くらいまでは大丈夫だから参加できる」という。主催団体にメールで問い合わせたときとの温度差にやや戸惑いつつ、とりあえず目玉であったツアーへの参加申し込みを無事に終えることができ、ほっと一息。

honey fes
▲ハニーフェスティバルの会場。プノンの人々が採集した蜂蜜やイベントTシャツ、プノンの民具などの販売も行われた。

ツアーは1泊2日で、蜂蜜の採集をしている村で寝泊まりする予定になっているため、参加者は各自、蚊帳の付属したハンモック、防寒対策のための毛布を用意しなければならないという。事前に送ってもらったプログラムによると、森の中で夜を明かすとなっていたので子どもじみた冒険心を大変くすぐられたのだが、実際には森の中ではなく村のなかでの宿泊だという。距離はあるが森に囲まれたような立地の村だったので、似たようなものだが。

プノンの舞踊
▲会場ではプノンの人々が伝統舞踊を披露してくれた。蜂蜜を含む森の恵みに感謝する意味があるという。

酒の飲むプノンの男性
▲儀式に使う壷酒を飲むプノンの男性。壷酒は彼らが昔から醸してきた伝統的な酒で、森の資源をおもな原料としている。

さっそく市場に行ってハンモックを買う。蓑虫の蓑のように全身をすっぽり覆うタイプのハンモックで、上部が蚊帳のように網になっている。センモノロムの市場で売っていたのは、長さが2メートル20センチのものと、2メートル50センチのもの。2メートル20センチもあれば十分な気がしたが、大は小を兼ねるというし、売り場の人が「あなたくらいの身長(173センチ)なら2メートル50センチのほうがいい」というので大きい方を購入。
続いて近くの売り場でやや薄手の毛布と、防寒用の長袖トレーナーを買う。モンドルキリ州は平均標高約800メートルで、カンボジアの平野部と比べると気温が低い。特に朝晩は想像以上に気温が下がる。4月はカンボジアが最も気温の上がるときだが、それでもセンモノロムの場合は長袖がないと寒さで目が覚めてしまう。プノンペンの暑さから逃れるには絶好の場所だが、それなりの準備をしておかないと、気温の低さに参ってしまい、避暑どころではない。

森へ向かう
▲ツアー参加者を乗せて深い森のなかを走るピックアップトラック

蜂蜜採集の現場見学は、想像以上に興味深いものだった。伝統的に続けられてきた生業だけあって、使用する道具は基本的にすべて森の中で調達できるものだ。一部、蜂蜜の製品化を考えて改良した道具が導入されていたが、森の資源を使って道具を作成し、その道具で森の恵みである蜂蜜を採集するという点に、森とともに生きてきた人々の知恵が詰まっているのだろう。蜂を巣から追い出すための発煙物(緑の葉の付いた生の枝で枯れた木の枝を包むようにまとめたもの。水分を含んだ葉で包み、不完全燃焼を起こすことで煙を出す)、その発煙物をくくりつけるひも(森で採取した植物の繊維)、巣から蜜の貯蔵庫を切り取るための木製のナイフなどを森の資源を使って作るのだ。蜂の巣を見つけた採集人たちは、その周囲で素材を探し出し、慣れた手つきで次々と必要な道具を作り上げていく。(続)

ナイフづくり
▲森で採集した木材を使い、蜂蜜採集用のナイフを作る男性

発煙物
▲枯れ枝と生の枝を組み合わせて作った発煙物に火をつけて煙を出す。この煙で蜂を燻しだす。



【“■モンドルキリでのコミュニティー・ハニー・ツアー”の続きを読む】

■蜂蜜を求めてモンドルキリへの旅

カンボジア東部、ベトナムと国境を接するモンドルキリ州へ行ってきた。目的はモンドルキリ州の州都センモノロムで開催されるというハニーフェスティバルを覗き、カンボジアにおける蜂蜜採集のヒントを得ることだった。
事前にインターネットで調べたりフェスティバルの関連団体に問い合わせたりして得た情報によると、ファスティバルの2日目と3日目には蜂蜜採集の現場へ行き、そこで蜂蜜採集について見学する「コミュニティー・ハニー・ツアー」が催されるという。ただ、定員が30人でWWFが招待したNGOのローカルスタッフに参加の優先権があるという。当日になってみないと、ツアーに参加できるか否かはわからないようだったので、とりあえず行ってみることにした。モンドルキリには2005年に1度行ったきり。たとえハニーツアーに参加できなかったとしても、調べたいことややりたいことがある。

休憩所のマンゴー売り
▲カンボジアは今、マンゴーが最もおいしい季節に入った。長距離バスの休憩所でも熟して甘い香りを放つマンゴーが売られていた(コンポンチャーム州プレイチョー郡)。

スヌオルからカエウセイマー間の国道76号線は舗装工事が始まっていて、2005年に走ったときと比べると、ずいぶん快適な道になっていた。片方の車線の舗装がほぼ終わっている区間は長く、すべての舗装が終わるのにさほど時間はかからないような状態だった。

スヌオルピックアップトラック
▲スヌオルの長距離タクシー、ピックアップトラック乗り場。ここからモンドルキリやスオン、クラチェなどへ向かう車が出る。

76号線
▲スヌオルとセンモノロムを結ぶ国道78号線。雨でぬかるみ始めている。

ピックアップ故障
▲タイヤの調子が悪くなり、途中で停車して修理するピックアップトラックタクシーの運転手たち。

カエウセイマーからセンモノロムの間でも整備工事が始まっていたが、舗装の前の段階といった感じで、行きはまだよかったが帰り、雨が降って赤土の山道がぬかるんだことに加えて、ブルドーザーやショベルカーで土をいじくっていたこともあり、一部区間は通行が困難だった。今まで見たことがないくらい、道がぐちゃぐちゃで通行に支障をきたすようになっていたため、その様子をビデオで撮影してみた(以下)。

動画:カンボジア・モンドルキリ州への旅


センモノロムの町も2005年当時と比べると、ゲストハウスやレストランの数が増え、町の印象はずいぶん変わっていた。水力発電が始まったことも町の姿を変えた一因かもしれない。

アボカド
▲モンドルキリの特産品である蜂蜜(右下のペットボトル)とアボカド(左上)。路上の簡易店舗で売られている。

ちょうど季節だったこともあり、町中のさまざまなところで蜂蜜が売られているのを見かけた。カンボジアのいくつかの土地で人に聞いたり、資料にあたったりした結果、カンボジアでは一般に3月、4月が蜂蜜の季節らしいことをつかんだ。この季節に採集された蜂蜜の質は最も高いという。蜂の巣のなかに貯蔵された花蜜が蜂蜜となるために巣のなかの温度は高く保たれている。4月は1年のうちで最も気温が高い。気温の高さと蜂蜜の質とになにか関係があるのかも知れない。

■お知らせ

4月6日から数日の間、メールをいただいてもすぐに返事ができないかもしれません。
トーマダー本誌の購読お申し込みおよび代金のお振込に関する連絡メールをいただいた場合、返信が遅くなるかもしれませんが、あらかじめご了承ください。

遺跡以外のカンボジアを旅する本「トーマダー」
発行人 井伊 誠


■これもベトナム、これもベトナム、これもベトナムよ

近所の市場へ夕食の買い出しに行った。いつも行く市場は、夕方になると路上に夕市がたつ。並べられた色とりどりの食材を眺めていて、ふと長ネギが目にとまった。はっきりとは覚えていないが、以前はスーパーマーケットでないと手に入らなかったが、2年くらい前から近所の市場にも並ぶようになった。
この近所の市場には、トマト、ジャガイモ、パプリカ、ニンジン、サツマイモといった日本でもおなじみの食材が並ぶ。味や色、形などは微妙に異なるとはいえ、日本にいてもカンボジアにいても目の前にある野菜が同じ。野菜を通して世界の均一化を再確認し、なんとなく陰鬱な気分になる。
ジャガイモやトマト、パプリカ、ニンジンなどの産地は何度か売り子さんに確認したことがあったが、そういえば長ネギのことは聞いたことがなかった。どうせ近隣国から輸入されたものだろうな、なんていう思いがよぎったが、意外な野菜や果物がカンボジア国産だったという話を聞くことがある。ひょっとしたら、長ネギもコンポンチャーム州のチャムカールーとかで栽培されていたりするのかもしれない。
「おばさん、この長いネギはカンボジアで栽培されたものなんですか?」
売り子さんに尋ねてみた。すると女性はやや投げやりな声でこう答えた。
「それはベトナムで栽培されたものだよ。(長ネギを手にもって野菜を指しながら)これもベトナム、これもベトナム、これもベトナムよ」


■もうすぐ雨季

久しぶりにまとまった量の雨が降った。近くにいる人の声も聞き取りにくくなるような激しい音を立てて、自然の恵みが地面を叩く。雨季、カンボジア(特に田舎)の景色が最も美しくなる季節がもうすぐ始まろうとしている。本格的な雨季はおそらくあと1ヶ月以上先のことだと思うが、わくわくする雨季の予感が迫ってきている。

今年こそは雨季の農村の風景をいろいろな角度から写真におさめていきたい。

■ベトナム南部における養蜂

ベトナム南部のMelaleucaでは、rafter beekeepingと呼ばれる養蜂が実践されている。rafter beekeepingというのは、野生のハチが営巣しやすいような角度で棒を設置し、そこに巣作りをさせて養蜂をするというやり方だ。人間が採取することを前提にして営巣させるので、自然界に�cまれている巣を探して採取するよりは採取の苦労が少なくて住む。報道によると、シェムリアップの一部の地域でもこうしたやり方が昔から行われているらしい(未確認)。

採取する前に働き蜂を巣から追い出すやり方は、カンボジアのそれとほぼ同じのようだが、Melaleucaの場合は一般に巣のすべてを採取するのではなく、蜂蜜が貯蔵されている巣の上部のみを採取するという。(ただし、大きなコロニーから採取する場合、たまに例外があるらしい)

ということは、カンボジアでも昔ながら方法を実践している地域なら、このような巣の損傷を最小限に抑える採取方法が実践されているかもしれない。「破壊的」な伝統ではない、人々が長年の経験から生み出して持続的に実践してきた方法がどこかで行われている可能性がある。

モンドルキリの蜂蜜祭りで、そのヒントが得られることを期待している。

この文章を書く前、仕事場の外から「はちみつがウンタラカンタラ〜」という声が聞こえてきた。窓から外を覗くと、何かを入れたビニル袋を手に持った男性が歩いている。仕事場から飛び出して確認したところ、蜂蜜売りだった。バンクロプーから仕入れたものだという。
粗く搾った蜂蜜のようで、巣の残骸とミツバチの本体が混ざっている。試食してみろというので、蜂蜜に浸った巣の残骸をつまんで口に入れてみた。単一ではなく、濃厚で複雑な味と香りが口に広がった。野生の蜂蜜なのだろう。ただ、個人的には多種多様な花蜜の香りと味が鼻から抜けるモンドルキリの蜂蜜のほうが好みだ。

売り子によると、クローイチュマー(レモンとライムの中間のような酸味を持つ柑橘類の果実)を搾って飲むとおいしいらしい。 蜂蜜レモンのような味がするのだろう。

気になる蜂蜜の値段は、袋にいっぱい入ったものが全部(推定量2リットル程度)で20米ドルだという。

■カンボジアの伝統的な養蜂に関する記事

「蜂蜜の採集人は毎日、夕方5時か6時ごろ来る」
という、非常に曖昧でなんの裏付けもない売り子の一言だけを頼りに、蜂蜜採集人を探す旅に出た。蜂蜜のことを調べているので、採集人から直接話を聞きたいし、できれば採集の現場にも行きたい。仕事場にいて資料とにらめっこをしているのにも飽きてきたので、採集人捜しに行くことにしたのだが、そもそも、採集人の顔すらわからない。いつものことだが、もう少しなんとかならないものかなあと思う。ただ、資料を読み進める過程で、やはり近隣国にも蜂蜜の採集に関してカンボジアと同様の手法や習慣、考え方があることを知った。
結局、この日は蜂蜜の採集人を見つけ出せなかった。また、別の日に探し当てるしかない。

英字紙プノンペンポストの記事で養蜂に関するものがあった。そのなかに、「持続的な養蜂」とやらを指導しにきた外国人が登場する。ひねくれた読み方かもしれないが、「無知なカンボジア人に外国人がものを教える」といったありがちな構成に感じられ、気にいらない。伝統的な養蜂は確かに現状とそぐわないものになってきているかもしれない。だが、蜂の巣を根こそぎ採取するからと言って、決して「破壊的」だとは言えないと思う。

この記事が描くカンボジアの「伝統(的な養蜂)」は、「破壊的」で「ばかげた手法」であり、「やめるべきもの」として登場する。だが、記事が伝える伝統的な養蜂は(意図的かどうかは別として)一面的で偏っている。紙面の都合やその他、諸々の事情があるのだろうが、記事が「伝統」について焦点を当てているのが「巣をすべて採取する」という点のみで、伝統が伝えてきた価値観や長所について触れていない。

確かにほとんどすべての巣を採取してしまう伝統的な養蜂は、森林の減少が著しいカンボジアの現状とはそぐわないものになってきているかもしれない。伝統の消失や断絶の問題もあるだろう。だが、巣の「所有者」である木に祈りを捧げ、働き蜂を殺さずに蜂の巣を採取する伝統は、「破壊的」なのだろうか。そこからはカンボジア人が森を恐れると同時に森の恵みに感謝する姿勢が読み取れると思う。

そもそも、「持続可能」だった養蜂が不可能になりつつある原因は何なのだろう? そこにも触れておかないと、蜂蜜の採集で生計を立ててきた人たちだけが悪者扱いされているようで、これまた気に入らない。

■プノンペンの朝焼け

プノンペン、朝焼け

■カンボジアでの蜂蜜採集方法

ツムギアリと並行して、引き続きカンボジアにおける蜂蜜の採集について調べている。
2年くらい前まで、カンボジアで蜂蜜の採集が行われているのはモンドルキリ州やラタナキリ州の山岳部のみだと誤解していたが、カンボジアでは古くから広い範囲で蜂蜜や蜂の巣、蜂の子が採集され、さまざまに利用されてきたことを学んだ。この国の心臓のように国土のほぼ中心に位置するトンレサープ湖でも採集が行われているというから興味深い。

資料を収集して「解読」作業を続けていたところ、蜂蜜の採集とツムギアリとの間に接点があることに気づいた。昔から自然と密接な関わりを持って生きてきた人々の知恵なのだろう。ツムギアリとミツバチの習性を巧みに利用した方法だ。

蜂蜜の採集を通してカンボジア人の森林に対する考え方がうっすらと見えてきたのだが、それと似たようなものがカンボジアの近隣国にもあることを知った。マレーシアの事例である。森と近い暮らしをしてきた人々が森をどのように捉えていたのか、その一端をかいま見るような気分になった。

詳しくは制作中のトーマダー6号に記すつもりだ。

なお、4月7日から9日にかけて、カンボジア北東部のモンドルキリ州で蜂蜜祭りが開催される。プノンと呼ばれる人々が多数派を占めるモンドルキリ州では、蜂蜜の採集が盛んらしく、しばらく前に州都センモノロムを訪れた際、ペットボトルに入れて市場で売られている蜂蜜を買ったことがある。具体的な味は忘れてしまったが、日本では食べたことのない味と香りのする蜂蜜だった。モンドルキリに限らず、カンボジアの市場で流通している蜂蜜は、ミツバチを家畜として飼育する近代養蜂の産物ではなく、森の中などで自然に営まれている巣を探して採集する旧式養蜂によるものだ。(社)日本養蜂はちみつ協会のウェブサイト(http://bee.lin.go.jp/index.html)に次のような記述がある。

(旧式養蜂は)数万年前から19世紀半ばまでの長い期間行われ、養蜂の歴史の大部分はこの旧式養蜂であったと言っても過言ではない。
 その方式のいくつかの場面は古い洞窟壁画にスケッチされている。中でも有名なものにスペインのアラニア洞窟の壁画がある。高い崖で自然巣を採集しようと女性が手を伸ばした絵である。このスケッチが描かれたのはおおよそB.C1万5000年のころだとされている。
 また、エジプトの古代墓からはB.C1000年以前の壷に入ったはちみつが発見されている。

モンドルキリ州で行われる蜂蜜祭りがどのような内容なのか、詳細は問い合わせ中なのでまだわからないが、カンボジアにおける養蜂や蜂蜜採集について新しい発見があることを期待している。

[参考]モンドルキリ蜂蜜祭りについて
Non-Timber Forest Produce Exchange Programme
http://www.ntfp.org/calendar.php

■蜂の巣の採取とカンボジア人の森林観

蜂の巣
▲蜂の巣と蜂の子、蜂蜜を売る親子。値段は1キロ3万リエル(約7.5米ドル)。彼らは自分で採取したものではなく、蜂の巣ハンターから買い取ったものを売っている。カンダール州ポンニャールー郡にて撮影。


カンボジアにおける蜂蜜や蜂の巣の採取方法、消費のしかたなどについて調べるため、カンダール州へ行ってきた。ツムギアリの取材でウドンへいったとき、国道5号線沿いで蜂の巣を売る人たちをみかけたため、まずは彼らを入り口にしてみようと考えた。

資料をひもといたり、売り子さんや買いにきた人から得たりした情報によると、地域によって違いがあるかもしれないが、カンボジアでは蜂蜜は伝統生薬の材料になる。また、何かほかの食べ物につけて食べるという食べ方も一般的なようだ。
巣の方は生食するか、焼いて食べるという。ハチの種類によって巣の形状もずいぶん違うが、大型のハチが作る巣はぱっとみた感じ複数重ねた段のあるパイのように見え、焼いたらうまそうだな、と思わせる外観だった。酒につけて薬用酒を作ったり、単に蜂蜜を混ぜてカクテルのように楽しむこともするらしい。蜂の子のほうはこれまた生で食べるという。

食べ方よりも興味深いのが、蜂の巣の採取方法だ。森と近い暮らしをしてきた頃のカンボジア人の考え方や習慣などが採取方法に取り込まれている。巣の採取を生業としている人を見つけたので、彼にいろいろと聞いてみたい。ただ、これまた他の伝統と同様、失われてしまった部分があるようだ。伝統的なやり方がどの地域で残っているのか、それも調べる必要がある。時間のかかりそうな仕事だ。

日本でも蜂の巣や蜂蜜の採取に関して同じような習慣ややり方、考え方があったと推測するのだが、インターネットであれこれ探してみたものの、残念ながらまだ関連情報にはたどり着けていない。図書館で探したいところだが、蔵書の限られたカンボジアの図書館では厳しいだろう。

■蜂の巣採取の取材

蜂の巣や蜂蜜の採取について取材するため、カンダール州南部のスアーン郡へ向かった。ツムギアリの取材で古都ウドンへ向かう際、国道5号線沿いで蜂の巣を売る露店を複数見かけて以来、蜂の巣の採取に興味を持つようになった。
スアーン郡で今の季節、蜂の巣の採取をやっているかどうかは不明だが、とりあえず行ってみないことには何も始まらない。日本のように役所や農協みないな組織に電話をかけて確認をできればいいが、カンボジアではなかなかそうもいかない。現場にいくのが最も近道だと思う。

タークマウの像
▲カンダール州の州都タークマウに立つタークマウ像。

プノンペンから南下し、カンダール州の州都タークマウを過ぎてさらに南へ下る。バサック川と並行する国道21号線は交通量が少ないので、走行は快適だ。バイクを駆って左右に田園の広がる道をトコトコと走って行き、スアーン郡の中心部にたつ市場をこえると、蝉の声が耳に響いてきた。上を見上げると真っ青な空にもくもくとした立体的な雲が浮かび、強い日ざしが照りつけてくる。日本の夏休みのようだ。

国道21号線
▲国道21号線

軽く探してみたが、蜂の巣の影は見当たらなかったが、代わりにたくわんのような漬け物を作っているところを見学させてもらった。

たくあん漬けづくり
▲たくあんのような漬け物チャイパウ(大根の意)を作る女性。

塩を砂糖の揉み込みを9日ほど繰り返して大根の水分を抜き、およそ2日ほど天日で干せば食べられるようになるという。日本と同じ保存食のようで、「1年おいといても腐らないのよ」と女性が言う。
スアーン郡では古くから大根が栽培されており、写真の女性の家では祖父母の代からチャイパウづくりをしてきたと聞く。チャイパウ作りが盛んなのは、チャイパウに適した大根が取れる4月から7月までとのこと。雨季が本格化してバサック川からプレーク(多くは人口の水路)を通って川の水が入ってくると、大根が水っぽくなり、チャイパウづくりには向かなくなるという。

小さなプレークと橋
▲バサック川とつながるプレークの一つ。こうしたプレークには掘削した人物の名がつけられることが多いらしい。

乾季になるとプレークは写真のように完全に干上がってしまったり、水がほとんどなくなってしまったりするが、雨季になって本流の水位が上昇すると、豊かな栄養分を含んだ水はプレークを伝って耕作地を潤す。こうして耕地は更新され、自然の恵みを受けた作物が実るのだ。

■クメールキックボクシングの観戦

会場
▲オールドスタジアムにあるクメールキックボクシングの会場


カンボジア語でケイラープロダルセレイと呼ばれるクメールのキックボクシングを見に行った。最近、友人と始めた新しい趣味だ。場所はプノンペン北部のオールドスタジアム敷地内にある試合場。現在、プノンペン市内でクメールキックボクシングの試合を見ることができるのは上記のオールドスタジアムと、ルセイカエウ区にあるテレビ局CTN(Cambodia Television Network)、モニボン橋を渡ってカンダール州キエンスバイの方向へ行った国道沿いにあるBayon TVの3カ所である。オールドスタジアム(TV5)では毎週、金曜日と日曜日に試合が開催され、その様子はテレビで放送される。

青コーナー
▲青コーナー側の観客席


前回、同じ場所で金曜日に試合を見に行ったとき、入場料は全席自由席で2000リエル(約50円、ただしごく一部、指定席のような席がある。詳細は不明)だったが、今回は3000リエル。曜日によって違うのか、試合ないようによって異なるのか理由はわからない。ただ、この料金で6試合ほど観戦できる。座席は指定席ではないので空いていれば自由に移動できるし、リングサイドに立ち、目の前で迫力ある試合を観戦することも可能だ。
観客はほとんどがカンボジア人だが、少数とはいえ旅行者のような外国人やカンボジア在住者らしき外国人の姿もある。この料金で6試合も楽しめるのだから、ファンにはたまらないだろう。

祈りを捧げる
▲試合開始前、祈りを捧げる舞を披露する選手たち


カンボジアではキックボクシングの人気は高く、試合の放送時間になると町中のコーヒー屋のテレビ前はファンたちでごった返す。多くは賭けているようで、選手たちの一挙一動にヤジや歓声が飛ぶ。

試合会場でも賭けが公然と行われていると思ったらそうではなく、今まで2回しか見に来たことはないが、会場内でそれらしき行為は目にしなかった。最近、賭博を取り締まる風潮が強まっていることと何かしら関係があるのか、それとも単にテレビで放送されるから、表立って賭けていないだけか。

楽団
▲楽団による生演奏


試合が始まると、古典楽器の楽団による生演奏が雰囲気を盛り上げてくれる。今日の試合では、見事、カウンターパンチが炸裂し、TKOとなった試合があった。カンターを食らった選手のほうは、真後ろに大の字の形のままバタンと倒れ、そのまましばらく動かなかった。脳を揺さぶられたのだろう。リングから退場するときも足取りはふらふらとおぼつかない様子だった。

■権力者とのつながり

引き続き、アリの取材をしに行った。今回はアリの採取をしている現場を見せてもらった。場所はプノンペンから北へ約60キロ、カンダール州ポンニャールー郡のある集落だ。

採取の取材が終わったあと、この前立ち寄った食堂でやや遅い昼食を取ることにした。「ごはんはありますか?」と聞いてでてきたのは、炭火で焼いた豚肉を白いご飯の上にのせたバーイサイッチュルーク(豚肉のせごはん)と、インスタントラーメンの粉スープをベースにしたようなスープで、骨付き牛肉がどかっと一塊入っている。それを食べていると、また食堂の経営者に話しかけられた。

最初はありがちな土地の売買の話だった。1ヘクタール30アール分のマンゴー園が1万米ドルで買えるんだがどうか、という内容だ。ちょっと前まで2万米ドルだったんだが、その所有者が物入りになったので値下げして売っている、お買い得だという。今のところ、カンボジアで土地を買おうとは思っていないし、何しろ自分はカンボジア国籍を持っていないので、名義問題が面倒くさい。本気で土地を買うつもりなら、いろいろと方法はあるが、そんなつもりもない。
「雨季になると、そのマンゴー園はとってもきれいになんるだぞ」
食堂の経営者は勧めてくる。土地を買ってカンボジア人の妻と結婚し、ここに移り住んだらどうだ。カンボジアは法の支配が緩いから、日本で暮らすよりいろいろと楽だし、この土地の有力者は自分の親戚だから何かあったとき便宜を図ってやるという。
「集落長も警察も私の親戚だ。バイクに乗っていて子どもとぶつかってしまったときとか、なんか困ったことがあったら私のところに相談に来なさい。すぐに解決してあげるから。人を撃ってしまったとか、殴り合いをしたとか、そういうことは助けてあげられないけれど、それ以外のちょっとした問題だったら解決するのはたいしたことではないんだ。カンボジアはね、権力者とのつながりがあると何かと楽なんだよ」


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